今回は、愛用のベースを綺麗にしたいと考えているあなたに向けて、「ポリッシングクロス」あるいは「クリーニングクロス」と呼ばれ使われている楽器用クロスについてご紹介します。
たかが一枚の布と思われがちなクロスですが、大事な楽器を掃除するのには必須のメンテナンスアイテムです。
クロスの正しい知識を身につけて、自分の楽器をきれいに長持ちさせましょう!
ベース用クロスの種類について
ベース用のクロスには、いくつか素材があり、それぞれ違いがあります。順番に解説していきますね。
マイクロファイバークロス
マイクロファイバーはとても目が細かく柔らかいのが特徴で、ギター・ベースの塗膜を傷つけず汚れをそっと拭き取ることができます。
天然素材であるコットンに対し、マイクロファイバーは化学繊維でできています。
ゴミやホコリがついたまま放置せず、かつマイクロファイバーを使って拭いていれば明らかな傷がつくようなことはまずありません。
ワックスやオイル、ポリッシュなどもそこそこ吸収できるので、空拭きの他にクリーニングにも使える万能クロスです。
使い勝手がよく、傷もつきにくいので楽器・メンテナンス初心者にもぜひ使ってほしいです。
登場したばかりの頃はコットンのクロスに比べ若干高価だったものの、量産することで最近は500円もしない価格で入手できるようになりました。
今では猫も杓子もマイクロファイバーといったところでしょうか。
ただ、どちらかといえばコットン(後述します)の方がポリッシュなどを使うポリッシングに向いていて、マイクロファイバーは仕上げや空拭き用クロスとして使うのに向いています。
確かに、中性洗剤で衣類などと同じように洗えば繰り返し使えますが、今では手が届かないほど高価でもないので筆者は洗濯をとばして金属パーツ磨きに使った後捨てたりします。
メガネのレンズ、パソコンやスマホの画面を拭くのにも使えるので、それのために何枚かストックしておくのも良いと思います。
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- メーカーMUSIC NOMAD ( ミュージックノマド )
- 販売者 愛曲楽器
コットンクロス
コットンはいわゆる綿です。
知っている方もいると思いますが、改めて確認しましょう。綿自体は大昔からある天然素材で、マイクロファイバーの登場まではギター・ベースの手入れ用クロスとして定番化していました。
吸収がよく、ワックスやオイル、ポリッシュなどを使った磨きや汚れを落として拭き取るポリッシングクロス向き。
マイクロファイバーよりも目が粗いため、力を入れてごしごし拭いたり磨いたりすると細かい傷がついてしまうことがあります。
そういう点ではあまり空拭きに向いているとは言えません。
力を入れないと落ちないような汚れを相手にする場合は無理にこすらず、ポリッシュと併用するか、空拭きするならマイクロファイバー素材のクロスで拭うのがおすすめです。
もちろん、洗濯すれば繰り返し使うことができます。
楽器屋的にはそれってどうなの?と思ったりもしますが、ワックスがけなど傷がつく恐れがない使い方をするなら、古着の綿Tシャツを使っても問題ないです。
ただし、ポリエステルなど石油由来の素材が混ざったごわごわしたTシャツは楽器本体に傷をつけてしまうこともあるので気をつけましょう。
それほど高くない上に、大切で高価な楽器を磨くものなので、そこまでお金を出し惜しみせずちゃんとしたものを買うのが無難です。
セーム革
セーム革とは主にシカの皮をなめした高級素材で、キョン(シカの仲間)の革を特に「キョンセーム革」と呼んでいます。
非常に柔らかく、髪の毛の15万分の1(0.0000015ミリ程度)の極細の繊維を持つため、ホコリやゴミが挟まっていなければ傷をつけることはまずありません。
ワックスやオイル、ポリッシュなどは使わず、空拭き専用のクロスとして使います。
(正確に言えばクロスと同じ使い方をされるだけで厳密にはクロスではない?)
元々わずかに油脂を含んでいるため、吸いつくような独特な感触があり、ガシガシ拭くにはやや不向きです。
この油脂が塗膜の艶に良い味を足すという人もいます。
マイクロファイバーやコットンと比べると高価で、天然素材でよくある「形が不ぞろい」というのも例外ではありません。
しかし、汚れや指紋を落とす能力は群を抜いており、一度使うとクセになってなかなか他のものを使えないのです。
目が非常に細かく柔らかいため、傷をつけにくいです。
(当たり前ですが、ホコリやピックカスなどを挟んだまま手入れをしなかった場合に限ります)
ラッカー塗装はもちろん、特にデリケートなセラック塗膜にも使えます。
ただし、キョンセーム革でもシリコン加工がなされた製品もあるため、お買い求めの際には要注意です。
湿度が高い時は湿気を吸い、乾いている時は吸収した水分を吐き出す性質を持ち、湿度を調整する働きもあります。
ギターやクラリネットなど、木製の楽器と一緒にケースに入れておくと多少ながら湿度や乾燥から楽器を守ってくれる効果もあります。
使っているうちに見た目は徐々にボロボロになっていきますが、そこは他の革製品と同じく、きちんと手入れすれば繰り返し長く使えます。
手入れは多少面倒で、汚れがたまってきたらぬるま湯に薄めた中性洗剤か石鹸を入れ、手洗いする必要があります。
以前は非常に高価でしたが、最近は相場も下がってきているようにも思います。
筆者も愛用中。
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- メーカーKASUGA
- 販売者 rockinginjp
シリコンクロス
シリコンから作られたクロスというわけではなく、クロスにシリコンを含ませたものを指します。
クロス本体の素材がどんなものであっても、シリコンを含んでいればすべてシリコンクロスといえます。
シリコンを含んだクロスは磨く力が少し備わっていて、空拭きでも汚れを落としやすいのですが、細かい傷をつけやすい一面もあります。
そのため、きれいな艶を持っているギターやベースの場合、使っているうちにその艶が消え濁ったような見た目になってしまうことも。
その反対(艶消し加工してあったのにいつの間にかツヤツヤ)もまた然り。
このようなことが相次いだため、あまり人気がなく、最近は見かけることも少なくなりました。
フレットやブリッジ、ペグなどの金属パーツ表面が曇っていたらささっと拭く、それには良いのですが…
ギター・ベース用に限定してみれば、見た目は気にせず楽に手入れしたい時や、大量の楽器を手早く磨く必要がある時くらいにしか活躍の場が与えられていないように思います。
何度か洗濯するとシリコンが落ちてノンシリコンクロスと同じになるといわれていますが、それならばわざわざシリコン入りのクロスを買わなくてもよいでしょう。
最近めっきり見かけなくなりましたが、細かい傷がつく危険を考えれば避けるのが安全です。
まとめ
最後に、それぞれの素材のクロスの使い所や違いについて、簡単にまとめます。
- マイクロファイバークロスはいろんな用途で使える万能アイテム。どちらかといえば仕上げや空拭き用。
- コットンクロスはポリッシュやワックス、オイルなどを使うクリーニング用として用いるのが便利。
- キョンセーム革は空拭き専用で他よりも高価。加えて手入れに手間がかかるが、汚れはものすごくよく落ちる。
同じ素材でも、タオルっぽくしたりする(パイル生地)など、仕上がりによってその使い勝手も大きく変わります。
クロスはギター・ベースのクリーニングには欠かせないものなので、色々試してみてお気に入りのクロスを見つけてくださいね!